Slow Fish セミナー@ジャパンインターナショナルシーフードショー レポート

2017/08/29

 

スローフィッシュからのメッセージ

~マグロ、地域、家族、そして日本の海と食文化の未来~

 

2017年8月24日(木)、日本スローフード協会×大日本水産会が表題のセミナーを共催しました。

グローバル化する世界において、日本固有の持続可能な魚食文化をどう発信し、次世代につないでいくか。

世界、地域、水産業、女性の目線から、日本の海と食文化の未来を探った90分です。

 

以下、簡単なレポートをお届けします。

 

 

● SLOW FISHって何?

世界最大の食関連のNPO-スローフード協会が考える、

世界と日本の魚食文化の持続可能な取組み

日本スローフード協会代表 伊江玲美

 

▶︎スローフードとは、スローフィッシュとは

 

スローフードは30年前にイタリアで発足し、草の根運動として世界160ヶ国、会員100万人以上に広がる、世界最大の食の運動です。2003年に発足した「スローフィッシュ」では、二年に一度、イタリアのジェノヴァで漁師と水産業者を中心とした魚の祭典を行なっています。漁師や水産業の現場にいる人同士が世界中から集まり、「自分の地域では~という魚の漁獲量が減っている」「その保護をどうしているか」「保全活動にスポンサーはいるか」「保全の方法は」など、互いの課題と解決策を交換し合う場です。学者や行政もその周りに集まり、現場の声を受け、海洋の持続可能性について研究し、発信しています。

 

*スローフィッシュ: http://www.slowfood-nippon.jp/single-post/slowfishreport

 

▶︎日本の漁業関係者の声を、世界へ

 

そんな場で、いま、圧倒的に足りていないと感じるのが、日本に生きる漁業関係者の声、思い、を世界に伝える取り組みです。日本スローフード協会では、今後、以下のような発信に力を入れたいと考えています。

 

1)1万8千年続く、縄文時代からの魚食文化(伝統食、伝統漁法、文化、神事)

2)日本の漁業者数20万人の多くは、小規模な家族経営の漁業者で成り立っている

3)日本の多くの漁業者や組合は、海と山の共存で次世代に伝わる持続可能な取り組みをしている、あるい はしていきたいと思っている

 

日本列島には、4800種もの魚を認識する総合知があります。マグロが絶滅したら、失われるのはマグロ寿司を食べる機会だけではありません。築地のマグロの競り、大間の大漁祈願祭、西宮神社のマグロ奉納神事、三崎のマグロ兜煮、伊勢志摩の手こね寿司、宮崎のこんぐり煮…。マグロがいなくなったら、豊富な食文化そのものが消えることになります。そして何より、それを支えてきたマグロ漁師という人種も。

 

▶︎多様な魚食文化の保全、発信

 

世界が日本に対して持つ、「魚ばかり大量に食べ、資源保全について考えていない」「巨大企業がマグロを 大漁乱獲している」というだけのイメージを打破したい。日本の漁業関係者ならではの資源保全の工夫を世界に伝え、日本の伝統魚介製品を、世界最大の絶滅危惧食品データベース「味の箱船」に登録できたらと思っています。

 

*味の箱船・プレシディアとは: http://www.slowfood-nippon.jp/ark-of-taste

 

スローフードでは、食材・人・文化・料理は一体であると考えています。1万8千年の魚食の歴史を持つ国として、日本の食文化の多様性、日本固有の魚食文化、そして日本が考える魚食の持続可能性について、世界に伝えていきましょう。次回、2018年に開催する「スローフィッシュ」には、ぜひ、多数の日本の漁業関係者と共に参加したいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

● 三崎から世界に伝えるマグロ食文化

(株)三崎恵水産取締役 石橋匡光

 

▶︎日本のMAGURO を、世界へ

 

三崎恵水産は、神奈川県逗子市に拠点を持つ、三崎三浦港で創業50年のマグロ加工・問屋です。遠洋はえ縄のバチ・キハダを主に扱っています。飲食店など全国展開するほか、2013年からはシンガポール・台湾 など10カ国に輸出も行なっています。シンガポールに開いた店は、2017年のミシュランガイドにも掲載されました。

 

海外で仕事をしていても、自分たちが扱うマグロのことはTUNAではなくMAGUROと呼んでいます。英語でTUNAと呼ばれる加工品には実はカツオも含まれる。刺身として食べることができない低品質なものが多いんです。

 

魚を生で食べることはどの国でも人気が高まって来ていますが、 英語では「新鮮」であることと「生」で あることがどちらも “fresh”。冷凍=ダメな魚の総称のように捉える人もいますが、日本には超低温の技術 がある。生がいちばん新鮮とは限らないことを知らない人が多い。日本の漁法や流通の知恵を総合知として きちんと発信しないと、世界中のMAGUROがTUNAになってしまうという危機感を持っています。

 

▶本当のサステイナビリティとは何か

 

一部の大企業が大量乱獲をやめない限りは、「日本=悪」のイメージは払拭されないかもしれません。でも、 日本の多くの現場では、同じく持続可能な漁業を目指しています。

 

世界の基準でいうと、たとえば、Seafood Watchは海のサステイナビリティーの権威とされています。しかし、彼らの基準と、現場の体感値は、少しズレているんです。たとえば、Seafood Watchはクロマグロを絶滅危惧種と指定していますが、実は大西洋では適正な規制を経て、クロマグロは増えていることを WWF(世界支援保護基金)も認めています。

 

また、彼らのスタンスは「はえ縄漁は鳥やカメが間違って釣り針を口にしてしまうことがあるためNG、巻き網船はOK」ですが、最近のはえ縄漁では、対象としない生物の漁獲(混獲)を避けるための技術が発達 しています。一方、網を使用した巻網漁は、狙った魚以外を引き上げてしまうリスクも高い。日本ではじまり、世界へと広がった延縄漁は、狙った魚をピンポイントに釣る、漁業資源に優しい漁法と捉えることもできます。

 

▶︎世界の衛生基準と、日本の品質管理のギャップ

 

また、日本では2020年に向けて、HACCPについての取り組みが盛んです。いいことかもしれないけれ ど、世界の基準に盲目的に従っていたら、それでいいのか。僕は、世界の安全や衛生の基準に、日本で長い間培って来た品質管理と工夫が勝るとも劣らないと考えています。

 

西側が提示するサステイナブル、また衛生管理の基準と、日本の現場の肌感覚にはギャップがあるとも感じ ています。このギャップについて、また、日本においてのサステイナビリティーとは何か、世界にわかる言 語で説明できるように集合知を作りたい。

 

食べることそのものをボイコットして、漁師の存在や、伝統・文化までも失うわけにはいきません。マグロ屋としては、持続可能な食べ続けかたを、これからも発信し続けたいですね。

 

● 女性目線で作る水産加工品 ~マグロコンフィ~

FISH STAND代表 石橋悠

 

▶︎まぐろコンフィとは

 

三崎で水揚げされた刺身クオリティのビンチョウマグロを使って、極上のツナを作っています。これをあえ てツナと呼ばず、「まぐろコンフィ」として販売しています。コンフィとは、オイルに漬け込み、低温にて 加熱する調理方法のこと。良質の塩とハーブで下漬けをし、オリーブオイルと一緒に一晩漬け込んだものを 翌日、スチームコンベクションで火入れしています。

 

 

加熱によって動物性タンパク質が凝固しないギリギリの温度帯でスチームで火入れすることによって、旨味 を封じ込め、ふわっとやわらかい食感に仕上がっていて、程よい塩分とハーブの香りを下漬けしているの で、開封してそのまま美味しく召し上がっていただける商品です。まるごとまぐろ屋さんが手がける、ご馳 走のためのツナ。それが「まぐろコンフィ」です。

 

▶︎無駄がなく、女性目線の加工品

 

まぐろコンフィはすべての工程を一つひとつ手作業で行なっています。製造予定日をウェブやSNSで告知し、予約受注生産という形をとっている。昨年の販売開始から地道に製造数が上がってきていて、生産開始からロスがゼロ。必要とされる分を必要なだけ作りたい。それが資源の保護につながると考えています。

 

販売は主に直売か、三浦半島内の店舗を厳選させてもらっています。素材にこだわるパン屋さんからの依 頼、希少価値のある商品を揃えたカタログギフトからの受注もありますが、一番は、地元三浦で食べてもら えるものを作りたいという思いがあります。

 

私自身が結婚し、東京から三崎に引っ越してきたとき、なかなか地元のお土産になるような、人に差し上げたい商品に出会えませんでした。水産加工品といえば、「おじさんくさい」イメージもありますが、実際に食品を購入するのは女性も多い。マグロの町の三崎から、ちょっとした地元自慢になるような商品を作って、まずは近くの方達に喜んでもらいたい。若い人たちに魚を食べてもらうには、現代に好まれる食べ方の 提案と、パッケージやイメージの出し方にこだわることは大事だと思っています。

 

▶︎フィッシュスタンドとしてのビジョン

 

東日本大震災以降、放射能の影響もあり、水産物、厳しい状況にあると、一消費者として感じています。けれども、海で囲まれた日本において、魚を中心とした食卓は日本食文化のかなめ。港町に暮らして、然るべ き採りかた、締め方をされ、目利きされた魚って本当に美味しいことがわかりました。その美味しさ、子ど も達にもっと味わってもらいたい。

 

加工品を作るならば、保存性よりも、味にこだわり無添加にこだわり、子どもたちに安心して食べさせた い。「たくさんあるからとりあえず加工」ではなくて、良い素材、良い調味料を使ってこだわって作る加工品づくりにシフトさせたい。然るべき価格で評価してもらうビジネスモデルを、まぐろコンフィで作りたい と思っています。

 

 

近年、彼(三崎恵水産取締役の石橋さん)が海外展開をして、グローバルにマグロの価値を高めようとして いるのは素晴らしいこと。その傍らで、妻の私が提案したいのは、ローカルに、地元の方達に楽しくマグロを食べていただきたい、地元の海産物を巡って食卓がさらに豊かになるような提案なのです。

 

 

●海は学校  ~塩炊き、タコとりから始める親子の収穫祭~

一般社団法人「そっか」/ 日本スローフード協会三浦半島支部代表 小野寺愛

 

▶︎自然×人の暮らし=子どもの居場所

 

「子どもの居場所がない」と言われる時代です。かつては、地域の自然と人の暮らしが交わる場所に、子どもの遊び場がありました。それが、自然と暮らしが切り離されたことで、子どもの居場所もなくなってしま いました。

 

 

であれば、逆に、自然の中で子どもたちと本気で遊ぶことで、地域の自然と暮らしをもつなぎ直すことがで きるのではないか。そう考えて、神奈川県逗子市の森里川海で子どもと本気で遊ぶ団体「そっか」をはじめ ました。

 

▶︎季節ごとの収穫祭

 

「この町の水源はどこにある?」「目の前にある海の水で作る塩はどんな味?」「知らん」「じゃあ、作っ てみようか」からはじまった収穫祭。前日夜から浜辺に陣取り、ひたすら海水を炊いて塩作り。その塩でい ただくのは「半径2キロ範囲で見つけることができる食べもの」だけというルールを作り、この町で採れる ものだけでバーベキューをしてみました。

 

町中の夏みかんを収穫し、地元・小坪の漁師さんの協力でワカメやタコをとってきて、里山に入っては食べ られる野草を摘んで天ぷらに。薪割りや火起こしも、テーブルや遊具作りも、皆で行います。そうして出来 上がった食卓の、豊かなこと!

 

親子200~300人でそんな遊びを続けるうちに、「You are what you eat / 私は食べたものでできている」が言わずとも浸透していきました。私は逗子でできている。この暮らしを大切にしたいと、皆で気づき はじめました。そして、そんな気づきから、たくさんのプロジェクトが動き出しています。

小学生の海の学校「黒門とびうおクラブ」。親子の自主保育「海のようちえん」。大人も本気で海を楽しむ 「大人の海の学校」。みんなの拠点となる「海のじどうかん」。

 

▶︎グローバル課題の解決策は、ローカルにあり

 

地域活動をはじめる前は、国際交流の船旅をコーディネートするNGO「ピースボート」に16年勤務し、環境教育プログラムを作ることを仕事にしていました。世界を9周しながら感じたのは、気候変動にせよ、格差の問題にせよ、「グローバル」な課題への解決策となりうるイニシアチブは、実は徹底的に「ローカル」 であるということ。デンマークの市民風車運動しかり、イタリア発祥のスローフードしかりです。

 

母親になり、子どもを育てるようになって、「わが子だけは」という発想は、逆にわが子のためならずと考えるようになりました。「私の子ども」から「私たちの子どもたち」に発想を転換して、地域全体の子どもを、地域全体の大人で育てていく。お金を払えばなんだって買える時代に、あえて衣食住をアウトソースす ることを少しだけ手放し、「食べる・つくる・遊ぶ」=つまり「生きる」ことを少しずつ自分たちの手に取り戻していく。海や森で存分に遊び、自然の循環を肌感覚で知っている。そんな子どもたちが地域に数百人 育ったら、きっとそれは何よりのムーブメントです。

 

世界は、いろんな土地の暮らしの積み重ねでしかないことは、旅をしたらすぐにわかります。人を作り、町を作り、社会を作り、世界を作るのは、結局、半径2キロの「食べる・つくる・遊ぶ」なのかもしれません。そう感じながら、今日も地元の海で子どもたちと遊んでいます。

 

 

 

 

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