チーズ回顧録:スローフードの歴史を創り上げた11のチーズ

2017/09/07

 

「Cheese」の祭が初めてスローフードの発祥地であるイタリア・ピエモンテ州の小さな町、ブラで開催されたのは、

今から20年前のことでした。

この祭は以来成長し続け、今では素晴らしいチーズとチーズ生産者を集めた世界最大規模のイベントになっています。

 

毎回、新しいチーズを発見しては、保護に取り組み、「Cheese」で紹介してきました。

以下11種のチーズは、過去20年間の「Slow Cheese」のキャンペーンにおいて最も重要なものたちです。

 

 

 

 

1997年  コンテチーズ /Comté

 

初めての「Cheese」の時、コンテチーズの生産者協同組合は、チーズについてのイベントが開催されることに大変感激し、

敬意を表するために巨大なコンテチーズを持ってきました。その大きなコンテチーズは、第一回「Cheese」のシンボルにも

なりました。コンテチーズは、東フランス・ブルゴーニュで作られるチーズで、その多様性が有名です。コンテチーズは生

乳で作られるため、生産環境に住む自然な菌が味に影響します。そのため、一つとして同じ味のコンテチーズはありませ

ん。 村ごとに、農家たちが乳を持ち寄る「fruitières(フリュイテール)」があり、それぞれ独自の環境と特徴を持ってい

ます。

 

1999年 モンテボーレチーズ / Montébore

 

この年までに、「生乳のチーズを守るためのマニフェスト“Manifesto in Defense of Raw Milk Cheeses”」がまとめられ

ました。そして、国際的なSlow Cheeseのキャンペーンがスタートしました。そして、この年はモンテボーレチーズが再発

見された年でもあり、そのウエディングケーキのような形が、1999年のチーズのシンボルにもなりました。

 

モンテボーレチーズの生産量は、産業化の波によって人口が都市に流入したことで、減少の一途を辿っていました。30年

ほど前にはほとんど生産されなくなっていましたが、1999年、ある一人の青年Roberto Grattoneが、最後の一人の生産者

である80歳の女性、Carolina Braccoをつきとめ、Robertoは彼女からモンテボーレチーズの生産方法を教わりました。

スローフードはそれに伴いプレシディア(Montébore Presidium)のプロジェクトを開始し、このモンテボーレチーズを絶

滅の危機から救い出し、今日に至っています。

 

2001年  Bitto Storico / Historic Rebel

 

Bitto StoricoやHistoric Rebelと呼ばれるこのチーズは、添加物の使用や、牛に牧草以外を食べさせることを禁止していな

い、いわば緩すぎるPDO(製品の地域性や品質を保つための法)に歯向かい、オリジナルな製法を守っているチーズです。

スローフード生物多様性財団(Slow Food Foundation for Biodiversity)の会長である Piero Sardoは、このチーズを守

るプレシディアプロジェクトはとても勇敢な一例だと評します。

 

本当のBitto Storico=Historic Rebelは一切添加物を使わず、乳酸菌なども添加しません。伝統的な製法で作っている生産

者は12名しかおらず、彼らは全て、チーズの名前の由来でもあるイタリア・ロンバルディア州のBitto川の谷間に位置しま

す。

 

このチーズは、6〜7年またはそれ以上の熟成期間を経ると、より特別になります。このチーズを守るプレシディアプロジ

ェクト(Historic Rebel Presidium)価格の安定化のため始動され、2001年のチーズの主役となりました。

 

2003年  オスツィペック / Oscypek

 

スロバキアとポーランドの境界線であるタトラ山脈の羊飼いたちは、14世紀からオスツィペックチーズを作っています。

このチーズは生乳で作られていたため、生乳で作られたチーズが禁止され、スーパーがプロセスチーズでいっぱいになった

1950年代に、違法となってしまいました。

 

スローフードポーランドのリーダーだったJacek Szklarekは、タトラ山脈を旅し、見つけた全てのオスツィペックチーズを

味見し、5種類の生産方法を確立させ、それがプレシディアのプロジェクトになりました。(Oscypek Presidium)

 

その年、羊飼い達はスローフード最大の祭典、「サローネ デル グスト」にてチーズを出展したいと申し出ましたが、ポーラ

ンドの政府がこれを拒否しました。しかし、彼らはカバンの中にチーズを忍ばせ、2日間のバス移動に挑んだのです…。結

果的には、オスツィペックチーズはわずか2日あまりで売り切れ、功を奏しました。

この出来事は、ポーランドの法規制に苦しんでいた羊飼い達に希望を与え、ポーランドと「Slow Cheese」の間に絆を生み

ました。

 

2005年 ロッカヴェラーノのロビオラチーズ / Robiola di Roccaverano

 

ヤギの乳で作られるRobiola di Roccaveranoは、2005年の「Cheese」の主役の一つでした。このチーズのプレシディア

プロジェクト(Roccaverano Presidium)は、多くの他の農家がより生産性の高いヤギの品種に変えていく中、在来のヤギ

の品種、Roccaveranoから搾乳する農家のみに限っています。

 

このチーズの再生は、Roccavranoヤギが再発見され、保存される動きにつながりました。

 

2007年 Tcherni Vit

 

10年の月日が過ぎ、「Cheese」はその規模を東ヨーロッパまで広げました。ルーマニアやブルガリアのチーズが、彼らの

伝統的な農法とともに初めて紹介されました。その年、ブルガリアの緑色のチーズ Tcherni Vitは大きな注目を集めました。

 

このチーズのプレシディアプロジェクト(Tcherni Vit Presidium)は、最後の生産者と言われていた80歳の男性が、もう

チーズ生産をやめるというときに始まりました。品種から熟成の方法まで細かく記録され、今では透明性と品質が保証され

ています。

 

2009年 ポコットの灰ヨーグルト / Pokot Ash Yogurt

 

この年は、アフリカからのブースが初めて「Cheese」に登場しました。アフリカ・ケニアのテルツォイ族の人たちが始めた

プレシディアプロジェクト(Pokot Ash Yogurt Presidium)は、在来の木である「cromwo」の木の灰で香りづけられた

独特なヨーグルトで、注目を集めました。

 

彼らの参加は、遊牧民のトピック、先住民族の伝統的な叡智について、アフリカでの深刻な干ばつ問題についてなどの議論

に、深みを与えてもくれました。以来、ポコットの灰ヨーグルトは「Cheese」の常連となりました。

 

2011年 オーヴェルニュのサレールチーズ / Auvergne Salers Breed Cheeses

 

2011年の「Cheese」は、チーズ生産において重要なポイント:乳・技術・場所の3つにスポットライトを当てる会となり

ました。生乳でのチーズ生産の深い歴史と豊かな地域性をもつフランスは、 オーヴェルニュ地方から多様なサレールチーズ

を持ち寄りました。

 

オーヴェルニュはフランスのチーズ生産地の中心にあり、5種類のPDOで決められたチーズの種類と、2種類の酪農用の牛

の在来品種(オーブラックとサレール)を誇ります。このチーズのプレシディアプロジェクトは、数少ない生産者のサレー

ル種の生乳で作られたチーズを、正当な価格で売ることを目的としたプロジェクトとして始まりました。

 

2013年 生乳のスティルトンチーズ / Raw Milk Stilton

 

2013年には、イギリスの島々のチーズが大きく取り上げられました。特に、生乳で作られたスティルトンチーズ=スティチ

ェルトンは革命的でした。

 

スティルトンはイギリスで最も古いチーズの一つですが、PDOの制度で殺菌消毒された乳を使うことが決められてしまいま

した。伝統的な生乳のスティルトンが消滅していく中、Randolph HodgsonとJoe Schneiderは何もせずにいられず、オリ

ジナルのレシピに則った、スティチェルトンの生産を始めました。殺菌消毒した乳を使わないため、スティルトンという名

前を使うことはできません。そこで彼らは、スティルトン村の昔の名称である、スティチェルトンという名前をこのチーズ

に名付けたのです。

 

3年後、スローフードはこのチーズを守るための署名運動(petition)を開始し、プレシディアプロジェクトを始動させまし

た。

 

2015年 セーラ・ダ・エストレーラ/ Serra de Estrela

 

2015年の回のテーマは、「山岳遊牧地帯への旅」で、スペインがホスト国でした。200種以上のスペインチーズが並び、多

様性を見せつけました。

 

しかし、ポルトガルからやってきたセーラ・ダ・エストレーラ(Serra de Estrela cheese)は、ひときわ注目を集めてい

ました。生乳から作られたクリーミーなこのチーズは、在来の羊のミルクと塩に、カルドンという植物のエキスを凝固剤と

して用いて作られます。このチーズも例に漏れず、多くの生産者が育てやすい羊の品種に替えたり、遊牧そのものの減少に

よって、存続の危機に立たされています。

 

「Cheese」20周年、そしてアメリカの生乳チーズ

 

19世紀中ごろ、低温殺菌の発明と産業化によって、小規模の生乳チーズ生産者はアメリカからほとんど姿を消していました。

 

しかし、今年、アメリカの生乳チーズが主役となります。アメリカで生乳チーズを保護するプレシディアプロジェクト

(The American raw milk Presidium)は、少数残った生乳チーズの生産者をサポートするために始まりました。24の農

家を束ね、品質の改善と農家同士のネットワークの強化を図っています。

 

9月16日に開催されるカンファレンス「Raw in the USA」では、生乳チーズに関する法規制とそれに伴う生産者の課題を

取り上げます。

 

アメリカの生乳チーズを試してみたいのなら、アメリカのチーズが沢山出展される、ガリバルディ通りのGreat Hallに立ち

寄ることをお勧めします。9月17日には、アメリカのクラフトビールと生乳チーズのペアリングを楽しめるワークショッ

プもあります(Taste Workshop on the 17th September)

 

 

 

 

オスツィペックについて:

 

https://www.slowfood.com/in-search-of-oscypek/

 

http://www.theecologist.org/investigations/food_and_farming/268547/cheese_smuggling.html

 

Related reads on Historic Rebel:

 

https://www.fondazioneslowfood.com/en/la-rivincita-del-bitto/

 

Sticheltonについて:

 

http://slowfood.com/slowcheese/eng/news/79/mutiny-on-the-dairy

https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2016/mar/27/artisan-cheesemaker-fights-for-stilton-label

 

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